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2021/06/03

帳簿書類の保存期間は7年間、保存方法は原則紙だが

法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならない。また、法人が、取引情報の授受を電磁的方式によって行う電子取引をした場合には、原則としてその電磁的記録(電子データ)をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要がある。

保存期間については、2015年度及び2016年度税制改正により、2018年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間に延長されている。なお、「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあり、また、「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがある。

帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則だが、保存期間の6年目以降(一定の書類については4年目以降)の帳簿書類は、一定の要件を満たすマイクロフィルムによる保存ができる。また、自己が電磁的記録により最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものは、紙による保存によらず、サーバ・DVD・CD等に記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができる。

電子データ保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けること、また、この申請書は、備付け開始日の3ヵ月前の日までに提出する必要がある。さらに、保存すべき書類のうち、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類以外の一定の書類については、紙による保存によらず、スキャナ保存を行うことができる(帳簿については、スキャナ保存は不可)。

スキャナ保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けること、また、この申請書は、スキャナ保存を行おうとする日の3ヵ月前の日までに提出する必要がある。なお、2019年度税制改正により、承認を受ける前に作成又は受領した重要書類についても、2019年9月30日以後に適用届出書を提出し、一定の要件を満たすことで、スキャナ保存することが可能となっている。

そのほか、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類については、一定の要件の下で、紙による保存によらず、その電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルム(COM)による保存ができる。COMによる保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出して承認を受けること、また、この申請書は、COMによる保存を行おうとする日の3ヵ月前の日までに提出する必要がある。

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2020/11/04

国税庁、PCR検査費用の医療費控除の適否を明示

<所得税>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束が秋に入っても見えてこないなか、ここに来て自費によるPCR検査の普及に伴い検査人数も増加傾向にある。そこで気になるのがPCR検査費用は医療費控除の対象となるのかどうかということだが、このほど国税庁は、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応などの当面の税務上の取扱いFAQ」を更新し、検査費用と医療費控除について見解を示した。

それによると、医療費控除の対象となる医療費は、(1)医師等による診療や治療のために支払った費用、(2)治療や療養に必要な医薬品の購入費用などとされているとした上で、新型コロナウイルス感染症にかかっている疑いのある者へ行うPCR検査など、医師等の判断によりPCR検査を受けた際の検査費用は、医師等による診療や治療のために支払った費用に該当するので医療費控除の対象となると指摘した。

ただし、医療費控除の対象となる金額は、自己負担部分に限るので公費負担により行われる部分の金額がある場合には、その部分は医療費控除の対象とはならないとした。また、医師等の判断によりPCR検査を受ける以外に、単に感染していないことを明らかにする目的で受けるといった自己の判断により受けたPCR検査の検査費用は、医療費控除の要件には該当しないため控除の対象には当たらないとの見解を示した。

しかし、PCR検査の結果、「陽性」であると診断され引き続き治療が行われた場合には、その検査は健康診断により病気が判明して治療が行われた時と同じように、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができることから、その場合の検査費用については、治療費とともに医療費控除の対象となるとした。なお、医療費控除に該当した場合は、検査に行くために要した交通費も医療費控除に含まれるので留意しておきたい。

                       提供:株式会社タックス・コム

2020/10/01

アルバイトの源泉徴収計算のポイント~副業かどうか

飲食店などでは、アルバイトを雇うことも少なくない。アルバイトに対して給与の支払いをする場合には、給料から所得税を源泉徴収する必要がある。これは正社員かパート・アルバイトかにかかわらず同様だが、源泉徴収する所得税の金額の計算にあたっては、パートやアルバイトに特有の注意すべきポイントがある。それは、そのアルバイト等がほかでも仕事をして給料を受けていて、そこでの仕事が副業かどうかの確認だ。

副業で働いている場合、副業でない場合に比べて源泉徴収する所得税の金額が多くなる。副業なのに、副業でない前提で計算をしてしまうと、所得税の源泉徴収額が過少になってしまう。そのため、パート・アルバイトを雇う際には、必ず副業かどうかを確認する必要がある。副業でない場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、最初に給料を支払う日の前日までに提出してもらわなければならない。

雇用者側は、同申告書の提出をもって副業か副業でないかを判断して、源泉徴収する所得税の計算を行う。源泉徴収する所得税の金額は、国税庁が公表している「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で確認する。月額表を見てみると、甲蘭と乙蘭に分かれているが、給与を支払うパートやアルバイトが副業ではない場合(本業の場合)は、甲欄を、副業の場合は、乙欄を参照にそれぞれ源泉徴収する金額を計算する。

乙欄(副業)は甲欄(本業)に比べて、源泉徴収する所得税の金額が数倍多く設定されている。甲欄(本業)では8万8000円未満は所得税の源泉徴収が不要なのに対して、乙欄(副業)では必ず所得税の源泉徴収が必要になる。パートやアルバイトの中には月給8万8000円未満に収まる人も多いと思うので、甲欄(本業)であれば源泉徴収が不要だが、乙欄(副業)であれば、月給がいくらでも必ず源泉徴収する所得税を計算しなければならない。

なお、源泉徴収票は、基本的には毎年12月に最後の給料を支払うときに、給与明細と一緒に渡すことになる。パート・アルバイトであっても必ず渡す必要がある。パート・アルバイトは年の途中で辞める人も多いが、この場合は、辞めるときに最後の給与明細と一緒に渡せばいい。源泉徴収票は、次の職場に提出したり、確定申告書に添付したりするための重要な書類だ。本業、副業にかかわらず、必ず渡す必要があるので留意したい。

                                                                                提供:株式会社タックス・コム

2019/04/26

郵便切手、購入時は「非課税」、実際の使用時に課税

<消費税>

日本郵政は、消費税引上げ時の10月1日から、手紙(25グラム以下の定形郵便物)の郵便料金を2円値上げして84円に、はがきを1円値上げして63円にする方針であることが新聞等によって報道された。この値上げは、10月から消費税率が8%から10%に引き上げられる分を転嫁する措置だが、この報道によって、郵便切手に消費税が含まれていることを改めて意識した人も多いのではないだろうか。

ところで、郵便切手は、消費税法上、購入場所によって課税・非課税の取扱いが異なるので注意したい。消費税法基本通達では、非課税とされる郵便切手類等の譲渡は、郵便局や指定された郵便切手類販売所など一定の場所における譲渡に限られる、と定めている。郵便切手は、郵送目的以外にも、物品対価やサービス手数料の支払いなど、現金に代えて使うケース、さらには、収集目的で購入するケースなども少なくないからだ。

郵便局等から購入した郵便切手は非課税仕入れだが、金券ショップなど郵便局等以外の場所から購入した郵便切手は課税仕入れとなる。ちなみに、コンビニは通常郵便切手類販売所なので非課税。郵便切手が譲渡場所によって取扱いが異なるのは、郵便切手が記念で発行されることも多く、プレミアがついて流通することによる。趣味的な収集目的として売買される場合などに課税するため、非課税となる譲渡場所を限定しているのだ。

また、郵便切手は、実際の使用時に課税取引となる。郵便切手を使って郵送・配達というサービスへの対価を支払っているということなので、課税取引となるわけだ。もちろん、会社が不要となった未使用の郵便切手を金券ショップなどに売却した場合は、郵便局等が行った譲渡には該当しないため課税対象となる。このように、郵便切手は原則、「購入時」は非課税で、「使用時」は課税ということになる。

したがって、郵便切手は、購入時においては課税仕入れには該当せず、使用時に使った分だけ課税仕入れとなるのだが、消費税法基本通達では、郵便切手を購入した事業者が、自ら引換給付を受けるものにつき、継続してその切手等の対価を支払った日の課税期間に課税仕入れとしている場合には、これを認めるとしている。つまり、継続して自己使用する切手は購入時に課税仕入れとする取扱いも認めているわけだ。

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2019/03/27

本来外注先が負担すべき源泉税を会社が負担した場合

<源泉所得税>

源泉徴収義務者は、役員や従業員への給与だけでなく、外注先への報酬等について一定のものには、源泉徴収して国に納付する必要がある。ところが、報酬等の源泉徴収義務についてはその判断に悩むものもあったり、また、うっかり忘れてしまったりして徴収しなかったところを税務調査で指摘されることも少なくない。こうしたケースでは、税務署が源泉徴収義務者(支払者である会社等)から強制徴収することになっている。

この場合、強制徴収された源泉所得税相当額は、経常的に仕事を発注している外注先であれば、請求して次回の報酬の支払額から立替払いをした源泉徴収税額を控除することもできる。しかし、単発で依頼をした外注先に対しては、いまさら請求はできないなどというケースもある。そこで、外注先から徴収せずに、本来外注先が負担すべき源泉徴収税額を会社が負担することも多いと思われる。

このように、強制徴収された源泉所得税相当額を会社等が負担した場合には、実質的に負担した源泉所得税相当額の報酬が支払われたことになるので、これに対する税額を再計算する必要がある。源泉所得税を納付した会社等は、その強制徴収された源泉徴収税額を外注先から徴収しないこととしたときに、その納付税額相当額の報酬等を支給したものとして、その税額を計算することとされている。

この計算については、給与等その他の源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の計算と同じように、税引手取額を税込みの金額に逆算して、その逆算した金額を源泉徴収の対象となる支払額として源泉徴収税額を計算することになる。したがって、支払者である会社等は、報酬・料金等の追加支給をしたものとして、その支払額について計算される源泉所得税を追加納付しなければならないとされている。

なお、消費税については、報酬として源泉徴収漏れとなった分を会社が負担すればその金額も報酬として消費税の課税対象とされるが、報酬として処理していたものが実質的に給与とされたことによる源泉徴収漏れを指摘されその分を会社が負担した場合には、その者に対する追加給与とされるので、消費税の課税対象とはならず消費税の控除はできないことになる。

                       提供:株式会社タックス・コム

2018/11/08

来年1月からいよいよ「スマホ申告」がスタート!

<国税庁>

来年2019年1月からスマートフォンを利用した所得税の確定申告、「スマホ申告」ができるようになる。スマホ申告は、サラリーマンの副業増加などにより個人で確定申告する人が増えている現状を踏まえ、納税手続きの簡素化を図る目的で導入されるサービス。ただし、年末調整済みの給与所得者で、医療費控除又はふるさと納税などの寄附金控除だけの一部申告者が対象だが、見やすいスマホ専用画面で確定申告書作成ができるようになる。

スマホ申告の手順はパソコンによる申告と流れはほとんど同じだ。国税庁ホームページから「確定申告書作成コーナー」に進み、「作成開始」をタップ。収入や適用を受ける控除額、名前、住所、マイナンバーなどを入力し、e-Taxで申告する場合はそのまま送信して申告が完了する。書面で申告する場合は、保存したデータを自宅のプリンターやコンビニエンスストアなどで出力して郵送等で提出する。

e-Taxで申告する場合の送信方式は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の選択ができるようになる。マイナンバーカード方式は、ICカードリーダライタでマイナンバーのデータを読み取ることで本人確認する方法。e-TaxのID(利用者識別番号)やパスワード(暗証番号)等の入力が不要になる。マイナンバーカードもICカードリーダライタも持っていない場合には、ID・パスワード方式を選択すればいい。

ID・パスワード方式は、事前に取得したIDとパスワードを入力することでスマホ申告ができる。IDとパスワードは税務署で職員と対面による本人確認を行った上で発行するため、運転免許証等の本人確認書類を持参して事前に税務署に出向く必要がある。なお、この方式はマイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応であり、国税庁では、将来的にはマイナンバーカード方式に統一していきたい考えだ。

この件については↓
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/smart_shinkoku/index.htm

                       提供:株式会社タックス・コム

2018/10/25

マイナンバー提供の猶予期間が2018年末で終了!

<国税庁>

国税庁は、金融機関へのマイナンバーの提供の猶予期間が2018年末で終了することから注意を呼びかけている。2015年12月31日以前に証券口座等を開設した人や投資信託等の取引を開始した人で、金融機関等へのマイナンバーの提供が済んでない人は、2019年1月1日以後、最初に株式・投資信託等の売却代金や配当金等の支払いを受ける時までに、金融機関等へマイナンバーを提供する必要がある。

2016年1月1日以後の金銭等の支払等に係る法定調書については番号を記載する必要があるが、告知義務のある一部の調書については、経過措置が設けられており、支払を受ける者から番号の告知を受けるまでは、番号の記載を猶予されている。例えば、2016年1月1日前に特定口座を開設した人は、同日から3年経過日以後最初に特定口座内保管上場株式等の譲渡や配当等の受入れ日までに、個人番号を告知しなければならない。

猶予期間の終了により、(1)株式・投資信託等の売却代金や配当等の支払いを受ける場合、(2)特定口座やNISA口座を開設している場合(すでにマイナンバーを金融機関等に提供している場合は、再度の提供は不要)、(3)外国への送金・外国からの受金を行う場合、はマイナンバーの提供が必要となっている。また、猶予期間にかかわらず、以下の場合などではすでにマイナンバーの提供が必要となっている。

それは、証券口座や財形預金口座を新規で開設する場合や、住所・氏名などを変更する場合だ。ただし、すでにマイナンバーを金融機関等に提供している場合は、変更前後の氏名・住所が記載された本人確認書類(運転免許証等)の提示を行えば、再度の提供は不要となっている。なお、確定申告書等については、税務署へ提出する都度、マイナンバーの記載と本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となる。

本人確認書類は、マイナンバーカードを持っている場合はマイナンバーカードだけで、本人確認(番号確認と身元確認)が可能となる。また、マイナンバーカードを持っていない場合は、番号確認書類(通知カード、住民票の写し又は住民票記載事項証明書などのうちいずれか1つ)と、身元確認書類(運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート、在留カードなどのうちいずれか1つ)の提示又は写しの提出が必要となる。

                       提供:株式会社タックス・コム

2018/10/12

役員への金銭貸与が給与課税されない「適正利率」は?

<所得税>

会社は利益の追求を目的としているため、役員や従業員にお金を貸す場合、必ず利息を徴収する必要がある。そのため、無利息でお金を貸すと給与課税の問題が浮上する。会社が役員に金銭を貸し付け、貸付利息を受け取る場合には、役員が支払う利息が適正な利率によって計算されたかどうかによって取扱いが異なるので注意したい。そこで問題となるのは、会社と役員間で金銭の貸借があった場合の「適正な利率」である。

まず、会社などが貸付けの資金を銀行などから借り入れている場合(いわゆる「ひも付き」)には、その借入利率(平均調達金利=(前事業年度の支払利息合計)÷(前事業年度の借入金平均残高))となる。それ以外の場合は、銀行金利に国が定めた利率で、近年の特例基準割合(毎年変わる)は、2014年:年1.9%、2015年:年1.8%、2016年:年1.8%、2017年:年1.7%と推移している。

上記の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が、給与として課税されることになる。役員から受け取った利息が適正な利率の場合は、会社の経理上、受取利息として益金計上され、法人税が課税される。適正な利率よりも高い場合は、適正な利率を上回る部分については、その役員からの受贈益として益金計上され、適正な利率部分と同様に法人税が課税される。

また、無利息又は適正な利率よりも低い場合は、会社は利益の追求を目的とする営利法人であり、経済合理性に反することから、適正利率との差額に相当する部分について、税務上は役員に対して給与の支給があったものとみなされる。したがって役員は、適正な利率によって計算された利息との差額が給与として所得税が課税されるが、年末調整時にこの差額部分を含めた上で所得税の計算がされていれば、確定申告の必要はない。

なお、役員に無利息又は低い利息で金銭を貸し付けた場合でも、(1)災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となったため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合、(2)会社において定めた合理的と認められる貸付利率による貸付金、(3)それ以外の貸付金の場合で、適正利率で計算された利息との差額が1年間5000円以下の貸付金、のいずれかに該当する場合には、給与課税しなくてもよいことになっている。

                                                                                   提供:株式会社タックス・コム

2018/08/22

短期前払費用として支払時点で損金算入できる場合

<法人税>

前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けたときに損金の額に算入すべきものだ。つまり、翌期の経費を今期の経費として繰り上げることは認められていないわけだが、例外規定として「短期前払費用」というものがある。

法人税基本通達では、「前払費用の額で、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払時点で損金の額に算入することを認める」としている。地代家賃・賃借料や保険料などで毎月支払っているものをまとめて1年分支払っても短期前払費用として全額損金算入できる。

例えば、3月決算法人が、当事者間の契約で、(1)期間40年の土地賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額100万円を支払う、(2)期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)24万円を3月末に前払いにより支払う、(3)期間2年(延長可能)のオフィスビルフロアの賃借に係る賃料を、毎月月末に翌月分の家賃月額61万円を支払う、といった支払いを継続的に行うとしているものが該当する。

しかし、利益が出たから今期だけ1年分支払うといった利益操作のための支出や、収益との対応期間のズレを放置すると課税上の弊害が生じるものを排除する必要があることから、継続的な支払いを前提条件とすることや、収入との直接的な見合関係にある費用については対象外とされる。例えば、借入金を預金や有価証券などの金融資産で運用するようなひも付きの場合の借入金の前払い利息は、短期前払費用の計上はできない。

これらに加えて、役務の受入れの開始前にその対価の支払いが行われ、その支払時から1年を超える期間を対価支払の対象期間とするような前払費用も、短期前払費用に該当しないので注意が必要だ。例えば、3月決算の企業が、期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)100万円を2月に前払いにより支払うといったケースが該当する。この場合は、全額を前払費用として資産計上することになる。

                                                                                   提供:株式会社タックス・コム

2018/08/01

会社主催の海水浴費用、家族同伴も損金算入できる?

<法人税>

暑い夏の定番は海水浴。家族のリクエストに応えて夏休みに海水浴に行くサラリーマンも少なくない。企業によっては、夏休みを利用して従業員や家族を泊りがけで海水浴に招待したり、会社が「海の家」と契約して、従業員や家族が一般の利用料金よりも低料金で利用できるようにするところもある。こうしたケースで企業が支出する費用は、常識的な範囲内の負担であれば原則、福利厚生費として処理することができる。

ただ、疑問が生じるのは、従業員の家族分の負担も福利厚生費に含めることができるのかということだ。家族同伴のレクリエーションとしては社内運動会などが代表的だが、運動会は宿泊を伴わない。宿泊を伴う社員慰安旅行では通常、家族分の費用負担は認められていない。しかし、一般的には海水浴といえば家族同伴であることから、税務上も、家族分の費用も含めて、福利厚生費として処理することを認めているようだ。

一方、「海の家」と契約して会社が補助するケースでも、補助方法によっては、問題が生じるおそれがある。例えば、従業員への補助分を現金で支給したり、従業員が利用した後で、その料金等を請求させて精算する方法をとると、給与課税となる公算が強い。こうした場合は、契約した「海の家」にあらかじめ利用料金を補助する形にして、補助費用が海の家の利用料金に確実に使われていることを明確にしておくほうが無難だ。

もちろん、会社が負担する費用を福利厚生費として処理するためには、その費用が常識的な範囲内のものであることはいうまでもない。泊りがけの海水浴旅行が、民宿や一般旅館を利用するような一般的なものでなく、超一流ホテルに長期滞在するものであったり、一部の幹部社員や役員のみを対象とするものであれば、給与課税や認定賞与の問題が生じる可能性が大きいので要注意といえよう。

                       提供:株式会社タックス・コム

2017/06/14

配偶者控除等の見直しに伴う源泉徴収

平成29年度税制改正では、個人所得課税改革の第一弾として、平成30年分の所得税から配偶者控除及び配偶者特別控除が見直されることとなった。合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者控除の適用対象外とされ、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(改正前は38万円超76万円未満)に引き上げられた。さらに給与所得者である居住者の合計所得金額が「900万円以下」と「900万円超950万円以下」、「950万円超1,000万円以下」に分けられ、それぞれ配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けることとなる。

従来の控除対象配偶者は「同一生計配偶者」と規定された。このうち配偶者控除又は配偶者特別控除の対象となる合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者が「控除対象配偶者」と定められた。さらに、居住者(合計所得金額が900万円以下である者に限る)の配偶者で、その居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額が85万円以下である者が「源泉控除対象配偶者」と定められた。

これらの見直しに伴い源泉徴収事務に関する改正が行われ、月々等の源泉徴収事務(年末調整を除く)においては、これまで給与所得者の配偶者特別控除申告書の提出により年末調整時に対応していた配偶者特別控除について、居住者の合計所得金額が900万円以下の場合は、配偶者控除と同様に「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出により、月々の源泉徴収に変わる。

つまり、給与所得者の扶養控除等申告書を提出し、税額表の甲欄を使用して給与等に対する源泉徴収税額を求める際に、配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされ、居住者と生計を一にする合計所得金額が38万円以下の「同一生計配偶者」については、障害者に該当する場合に扶養親族等の数に1人を加算することとされた。

一方、居住者の合計所得金額が「900万円超950万円以下」又は「950万円超1,000万円以下」の場合には、月々の源泉徴収ではなく、その年の年末調整時において、一括して「給与所得者の配偶者控除等申告書」を給与等の支払者に提出することにより、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける流れとなる。

前述の給与所得者の配偶者控除等申告書とは、現行の「給与所得者の配偶者特別控除申告書」を改めたもので、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合に必要となる。現行の「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」(兼用様式)については、平成30年分以後は「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式に分かれる予定という。この改正については、平成30年分の年末調整時の対応となることから、新たな様式は来年以降の公表となろう。

                    提供:税務研究会・税研情報センター

2017/04/26

事業承継税制と相続時精算課税の併用で税負担を軽減

<税制改正>

2017年度税制改正においては、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)が、人手不足下における納税猶予取消リスク増大への対応のため、拡充されている。それは、(1)自然災害時等の雇用確保要件を免除(一部緩和)、(2)小規模な企業を中心に雇用確保要件を緩和、(3)相続時精算課税制度との併用を認める、(4)生前贈与後に納税猶予が取消となった場合でも、納税額が相続税と同額になる、などだ。

このうち、相続時精算課税制度との併用を認めたことから、生前贈与後の納税猶予中に雇用維持要件等を満たせずに認定が取消しとなった場合でも、納税額が相続税で株式を取得した場合と同額になる。ということは、贈与税の納税猶予が取消になった場合に生じ得る高額な贈与税負担を大幅に軽減することになるので、早期かつ計画的な生前贈与の促進が期待できるとみられている。

相続時精算課税制度は、生前贈与時に2500万円という大型の特別控除と特別控除を上回る金額には一律20%の軽減税率が適用でき、同制度を選択した場合の相続発生時には、生前贈与財産と相続財産を合わせて計算した相続税額から、生前贈与時に納めた贈与税額を控除して精算する。原則として、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子や孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度だ。

相続時精算課税制度を選択した場合、相続時発生時に相続財産と合算する贈与財産の価額は「贈与時の価額」とされるが、これまでは贈与税の納税猶予の適用を受ける株式等は相続時精算課税を適用できないことになっていた。それが2017年度税制改正で、相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予の適用対象に追加されたことから、納税猶予取消時に、相続税よりも高額な贈与税を納税しなければならないリスクが解消される。

相続時精算課税との併用によって、納税猶予が取り消された場合でも2500万円までなら取消時に贈与税がかからず、2500万円超の部分も税率は一律20%で済むことになる。株式の評価時期は異なるが、併用によって、納税猶予取消時の税負担を相続で株式を取得した場合の相続税と同レベルまで引き下げることができるので、納税猶予取引時に相続税よりも高額な贈与税を納税するリスクは相当下がることになる。

                                                                                            提供:株式会社タックス・コム

2017/02/08

最高裁、節税目的での養子縁組でも有効との初判断

2015年1月から相続税が課税強化され、2015年分の相続税課税割合はそれまでの約4%から8%へと大幅に上昇し、節税目的の養子縁組に対する関心が改めて高まっている。そうしたなか、相続税の節税を目的とした養子縁組が有効かどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)は1月31日、「節税のための養子縁組であっても、直ちに無効とはいえない」との初判断を示し、注目されている。

この事案は、2013年に死亡した82歳の男性が、亡くなる前年に長男の息子である孫と養子縁組をしたことが発端となったもの。その結果、長男と娘2人だった男性の法定相続人は、孫との養子縁組が有効であれば4人となる。男性の死後、娘2人は「養子縁組は無効」として提訴した。一審の東京家裁は有効と認定したが、二審の東京高裁が養子縁組を無効と判断したことから、孫側が上告していた。

二審の東京高裁は、長男が自宅に連れてきた税理士から孫を養子にした場合の節税メリットがあることを父親に説明していたことから「相続税対策が中心で、男性に孫との真実の親子関係を創設する意思はなかった」として、養子縁組を無効と判断。この養子縁組は、もっぱら相続税の節税のためにされたものとした上で、このような場合は民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとした。

これに対し、最高裁の第三小法廷は、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存し得る」とした上で、「節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」と指摘。本件の養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「男性に縁組をする意思がないとはいえない」として、孫との養子縁組は有効と判示した。

相続税の基礎控除額は「3000万円(男性が養子縁組をした当時は5000万円)+600万円(同1000万円)×法定相続人数」で算出される。相続人が多いほど控除額が増えて相続税額が減少するため、富裕層を中心に節税目的で養子縁組をするケースが少なくない。養子は、実子がいても1人、実子がいなければ2人まで、相続人に含められる。今回の最高裁判決を受けて、今後さら節税目的の養子縁組が広がる可能性がある。

最高裁判決は↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/480/086480_hanrei.pdf

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2016/10/19

国税庁、2016年分の年末調整における留意事項に注意

<国税庁>

早いもので年末調整の時期が近付いてきたが、国税庁はこのほど、「2016年分年末調整のしかた」を公表し、この中で年末調整における主な留意事項として、(1)2016年1月からの通勤手当非課税限度額引上げへの対応、(2)国外に居住する親族に係る扶養控除等の適用、(3)年末調整関係書類に係るマイナンバー(個人番号)の記載を不要とする見直し、の3点を挙げて注意を呼びかけている。

通勤手当の非課税限度額は、2016年度税制改正で2016年1月1日から改正前の10万円が15万円に引き上げられた。ただ、改正法が4月1日に施行された関係で、改正前に支払われた1~3月分の通勤手当については、改正前の非課税規定を適用したところで所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が行われており、改正後の非課税規定を適用した場合に納め過ぎとなる税額がある場合は、本年の年末調整の際に精算する必要がある。

既に支払われた通勤手当が改正前の非課税限度額以下である人については、この精算の手続は不要だ。また、年の中途に退職した人など本年の年末調整の際に精算する機会のない人については、確定申告により精算することになる。中途退職者などに対し、既に給与所得の源泉徴収票を交付している場合には、「支払金額」欄を訂正するとともに、「適用」欄に「再交付」と表示した給与所得の源泉徴収票を作成し、再交付する必要がある。

次に、2015年度税制改正において、国外居住の親族に係る扶養控除や配偶者控除等の適用が厳格化されている。2016年1月1日以後に支払われる給与等の源泉徴収又は年末調整において、非居住者である親族(「国外居住親族」)に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除(「扶養控除等」)又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出又は提示する必要がある。

最後に、2016年度税制改正で、年末調整関係書類のうち、給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の配偶者特別控除申告書、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書については、2016年4月1日以後に提出するものからマイナンバーの記載が不要とされた。給与の支払者がこれらの申告書を受理した際に、給与の支払者が個人である場合には、これらの申告書に自らのマイナンバーを付記する必要はない。

ただし、給与の支払者が法人である場合には法人番号を付記する必要がある。また、2014年分の所得税の確定申告で(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けた人については、税務署から個人番号欄のある「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が送付されているが、上記のとおりマイナンバーを記載する必要はないので、注意が必要だ。

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2016/09/23

オリンピックの金メダリストは300万円まで非課税

<所得税>

8月21日に幕を閉じたブラジル・リオデジャネイロのオリンピックでは、日本勢が大活躍し、金メダル12個、銀メダル8個、銅メダル21個の計41個となり、前回2012年ロンドン大会の38個を上回り史上最多のメダルを獲得した。ところで、メダリストには、財団法人日本オリンピック委員会(JOC)や各競技団体からご褒美として報奨金が支給されるようだが、その報奨金は所得税法上どのような取扱いになっているのだろうか。

JOCや財団法人日本身体障害者スポーツ協会(JPSA)から交付される報奨金については、一定額が非課税とされている。また、JOCやJPSAに加盟している競技団体等で、文部科学大臣の指定を受けたものから交付された金品についても一定額が非課税とされている。この非課税措置については、当初は租税特別措置法で規定されていたが、2010年度税制改正において所得税法の本則に規定された。

JOCからの報奨金は、金メダルが500万円、銀メダルが200万円、銅メダルが100万円とされているほか、各競技団体からも賞金・報奨金を受け取ることができるが、賞金額は競技種目によって異なっており、種目によって最大水泳の3200万円(スポンサー企業も含め)から柔道の0円までと大きな差がある。さらに、メダリスト選手が所属している企業からも独自に支給される報奨金が受け取れるケースがある。

これらのオリンピックの賞金・報奨金の所得税法上の取扱いについては、上記のように、「一定額の報奨金は非課税」とされている。財務大臣が非課税枠を定めており、JOCからの報奨金でもJOC加盟の競技団体からの報奨金でも同様に、オリンピック競技大会において第一位に交付される金額は300万円、第二位は200万円、第三位は100万円までが非課税とされている。この非課税枠を超えた部分は一時所得として課税される。

したがって、金メダリストは500万円との差額の200万円が課税対象になってしまうわけだ。また、JOCに加盟していない競技団体やスポンサー企業から支払われる報奨金については全額一時所得扱いとして所得税が課される。オリンピック選手の中には、企業に所属している選手もいると思うが、その企業から報奨金が支給された場合は、賞与と同じ扱いで給与所得として源泉所得税が徴収されることになる。

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